11.03.11
今年も大学卒業設計コンクールの神奈川県大会が開催されました。昨年まで高橋晶子さんの審査委員長のもと私が実行委員長をつとめていましたが、今年から実行委員長を建築家の伊藤寛さんにバトンタッチしての開催です。会場は横浜のBANK ARTでした。
毎年、時間の許す限り出展者に質疑応答をして僕なりに学生の考えていることを理解するようにしています。学生のやりたかったことは模型やプレゼンテーションを見ただけでもだいたい伝わって来ますが、発想の原点やデザインそのものの根っこが学生自身の独自性によるものなのかは見ただけではなかなか分かりません。だからこそ時代の迎合性や表層の真似事は、疑問に思ったことを問いかけて返ってきた言葉をきちんと観察して見破らないといけません。コンピューターによるプレゼンテーションが進化している時代だからこそそれはとても重要だと思っています。
プレゼンテーションの構成要素で多くを占めるサーベイ(調査分析)は、原則的に言語化が可能でそれ故にそれだけで'それらしい'アウトプットが出来上がります。言い方を変えれば、紙面を埋めることが可能です。でもそれだけで終わっている作品は建築空間の構築というもっとも重要と僕が考える本質的部分が見事に欠落していて、見ていてまったくつまらない。本質というものは往々にして言葉にならないものだから、そこに正面から立ち向かって、伝え得ないそれを伝えようと苦しむところに作品が生まれるチャンスがあることを学生の多くは知らない様です。言葉を操って教えることが教育とすれば、最初から限界があることは分かっているのだから、あとは自分の勇気と力で飛躍するしかないのです。