Report

「岐阜の家、竣工レポート」

10.02.10

先月、半年にわたって工事を行ってきた住宅が岐阜で竣工しました。敷地はとても広かったのですが、家は平屋で、閉じた中庭が二つと半分開いた中庭が一つあるコンパクトな住宅です。周囲は毎度ありがちな二階建て住宅に取り囲まれて、デザイン的な要素としては評価するべきものは見あたりませんでした。そういったごく一般的に見られる周辺環境の中に、どの様な形態を置くのかはやはり難しい問題であり、迷ったあげく低くそして控えめに、を心がけることで毅然としていて背筋の伸びた空気をそこに作りだそうと思っています。もちろん、それは周囲に迎合することではなく、一方で敬遠し過ぎるがあまり奇抜で目立つ形態をつくることも意味していません。あくまで自然体で、僕が発見しうる限りの美しいプロポーションと影のある風景がそこに出来れば、きっと街並みとしてもいいことが起こるだろうと信じているのです。

さて、竣工した岐阜の家は道から見ると真っ白な砂利に浮いた様な縁側のある家です。実は計画ではそこに水盤が出来るはずだったのですが、予算の関係で最終的には砂利になりました。しかしクライアントのお陰でスクリーン効果を狙った布袋竹もなんとか植えられましたし、建築のデザインは水盤が無くとも生き残った感があります。布袋竹のスクリーンは前面道路に平行して植えられ、一方で道から庭に向かってまっすぐ向かう軸線に沿って植えられた姫シャラが布袋竹と交差して庭へ突き抜けます。

低く構えた昔見たことがある家としてのプロポーションが柔らかく街並みに開き、奥行きのある庭を形成することで、周辺に立ち並ぶ「何も考えていない」住宅の在り方に対する僕なりの姿勢が静かに表明出来たと思っています。とてもおとなしいデザインなのに、道行く人が皆振り返って見て行く、そんな感じが僕は好きです。

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