Report

「大学卒業設計コンクールレポート」

10.04.23

3月19日、日本建築家協会神奈川地域会が主催する大学卒業設計コンクールの神奈川大会が開催されました。今年は合計37作品が神奈川県内に所在する各大学から選抜され、慶應義塾大学の湘南藤沢校舎内の学食を会場にして公開審査にて行われました。私が実行委員長を務めて3回目です。会場は昨年に比べて会場面積が小さく、しかも変形していたので会場構成、設営は苦労しましたが、むしろ作品で埋め尽くされた会場の臨場感はよかったと思いました。

さて、率直に言って今年の各大学の選抜作品は全体的におとなしい印象を持ちました。例年上位に上がってくる、いわゆる「タワー系」の上へ上へと構築しようとするパワーのみなぎる作品が無かったこともその要因かもしれません。しかし、純粋に空間のモデルを追求する案と、一方でバナキュラーな視点、あるいは現在の極めて日常的な視点から問題点を抽出して建築空間を(対外的には結果論としての空間を)追求する案とに二極化していて、永遠の課題として未だ残るテキスト主導型と空間主導型のせめぎ合いを強く感じました。同時にその方向性は各大学の教師陣によっても大きく変わる部分でもあります。そんな中、空間のモデルへの試みは今年も東海大学のお家芸とも言え、その作風を評価する審査委員と、一方で空間の構築とそれをバックアップする理論のバランスに長けた横浜国立大学を評価する審査委員という構図も昨年同様に見え隠れし、そこも興味深いところでした。

近年の傾向として驚くべきことがあったのですが、コンクールで入賞する優秀な学生が、必ずしも設計事務所に就職せず、たとえばハウスメーカーや工務店に入社する学生が多いということです。不景気の影響かもしれませんが、学生時代に向かった一つの夢は夢として、卒業を境にしてものすごい勢いで大人になってしまうんだな、と、表彰式を見ながら少し寂しい気持ちがしました。

▲ページトップへ戻る