17.11.01
標高850mの長野県高山村に小さなワイナリー、Hikaru Farmが立ち上がりました。そして私がお手伝いさせて頂いた建物は第一期工事としての醸造棟(ワイン製造工場)です。冷涼な気候を利用してピノノワールを主体とする赤ワインを目指しているオーナーの熱い思いを受けて、限りある予算の中でしたが幸運にも良きパートナーとしての施工者にも恵まれ、日本のワイン業界に誇れる建物が出来たと思っています。
日本のワインはまさに今、飛躍的に質と量ともに向上しつつあります。その様な中でこれまでの西欧に基準を置く価値観ではなく、日本の風土で育った食材と食文化にマッチする日本のワインを目指す時にさしかかっています。そしてその考え方は、ワイナリー建築そのものにも当てはめることが出来る考え方です。私はワイナリー建築についても、日本の風土と文化に根ざした素材使いと存在の仕方が必要だと思い、その考え方がオーナーと共有され、設計者として指名されました。
敷地は作付面積が約4ヘクタールに及ぶワイン畑の一画です。緩やかに傾斜する地形を活かして、半地下的な空間をつくりました。外観はとてもコンパクトで平屋の風情ですが、中に入ると数字以上の体積感を感じる空間となっています。構造は予算の関係からシンプルな木造軸組工法を採用し、雨の多い日本では最も馴染み深い切妻型の屋根、さらに庇を出して外壁材の焼き杉を保護しています。内観は耐震要素としての木造壁をリブとして扱い、アーチ状にデザインしたリブを連続させることで、縦延びの空間プロポーションと長手方向の奥行き、さらに陰影を作りだしています。
10月からまさに仕込みの最中ですが、2020年ころまでは主に東京のレストランと海外を中心に提供してゆく方針と聞いています。そして樽塾庫やレストラン等を含む二期工事へと進み、その後地元を中心としてより多くの方々へと素晴らしいワインを提供出来ることと思います。今回の設計を通じて、私もワイン作りをいろいろと勉強させて頂きました。この様な機会を頂いたクライアントに心より感謝致します。