12.04.04
7ヶ月かかった山梨県上野原市の小さな住宅が先月、やっと竣工しました。引き渡し当日は一面が霧に包まれ、まるで雲の中に居る様で(実際、そうだったのかもしれません・・・)幻想的な風景でした。
周囲には僅かに民家が点在はしますが、まるで高原の様な雰囲気の敷地に建っています。樹木に埋もれるというよりは草原の中ですので、季節によって青々としていたかと思うと秋には黄金色に包まれます。
そんな変化に富んだ色と傾斜地という大地を強く意識してうまれたのがこの小さな木の箱です。木という素材感が大地に吸収される瞬間や、一方で燐として建つシャープさの両方を出したくて壁も屋根も目透かし張りとうい仕上げ方法で建築を包み込みました。
内部に入ると真っ白な「中の間」という空間と、外部がそのまま引き込まれた「外の間」の2種類の居場所が互い違いに食い込みながら空間にくびれをつくり出し、それぞれ4つの居場所が出来るように配置されていますので、20坪の建築面積の中に8つの居場所があることになります。
「中の間」には直接外に面する窓はなく、必ず外の間経由で光りと風景が入る様に仕組まれており、主たるあかりはトップライトです。トップライトと壁との関係を、どの場所から見ても対称性の無い配置としているため、斜めの壁と傾斜天井とが僅かな平面積のなかに複雑な陰とシークエンスを創り出しています。
「外の間」は、直接外部へ接続された壁、床、天井が木で仕上げられた空間ですが、全てが一般的な意味での屋内とは限らず半戸外の場所が2カ所あります。
どの方向を向いてもそれぞれ異なる風景を眺める事が出来る敷地であるため、4方に向けた外の間は、風景を取り入れる為の斜めの壁を構成上用いています。
工事直後の建物周囲はまだ土が露出している状態ですので、スタッフと3人で野花の種を30袋かそれ以上、蒔きました。初夏の頃には辺り一面に花を咲かせてくれることを祈って、それまで竣工写真は待ちたいと思います。