12.06.09
茨城県守谷市に若い夫婦のためのとても小さな家が竣工しました。敷地は決して狭くはなかったのですが、私はそこに出来るだけ小さな家を、敷地の真ん中に建てて、周囲は全部竹にしたいと最初から考えていました。若い夫婦にすぐにそのアイデアは受け入れられ、4方を広縁と庇と竹に囲まれた4.5帖の畳の間が、出来上がりました。廻りはまだ土の道と雑木林の風景が残っており、その感じもあってか土壁風のモルタル壁と黒い柱の風情で仕上がっています。
キッチンとダイニングテーブルは1階の7帖くらいのスペースにきっちり計画されており、その密度感が僕は何よりも大好きなのです。我が家は4.5帖くらいのところに同じ機能が完全に格納されてますけど、やはり大切なのは人体スケールに寄り添う空間スケールと隣接する場所への抜け、その場の光のプロポーションの問題です。ここを間違えるとただの納戸の様な場所になってしまいますから。
スキップフロアを上がって行くと広々とした勉強の間に辿り着くのですが、1階の畳の間とは正反対で、こちらは窓を横長水平スリットに絞り込み、カウンターに反射させて内部に拡散させています。しっとりとした落ち着いた空間です。
そもそも、施主の要望で最も印象に残っているのは、「夏の夕暮れ、縁側に座ってウイスキーのロックを飲みたい」とい言葉で、それで家の建ち方が決まってしまいました。もちろん施主の原風景である農村型住宅での幼年期からの生活が、僕には大きなバイアスとして働いています。
要望というよりは生活そのもの。施主のいかんともし難い、その生き様が家そのものに反映されるといいなと、いつも思っています。この家の竹林が完成するまでに5年から10年くらいかかりますが、竹越しにあんどんの様に浮かぶ夕景が今からとても楽しみなんですけど。