13.02.15
先月末、横浜市の日吉でギャラリーとスモールオフィスを併設した住宅が竣工しました。割と最近まで気が付かなかったのですが、acaaとして横浜市内で初めての竣工物件です。決して避けてきた訳ではないのですが・・・我ながら意外でした(笑)。
場所は急な坂道を登った上にありました。もともと建っていた2階建て家屋は、敷地の傾斜具合や、裏手に広がる森の美しさなど、完全に無視したかの様な無茶な建ち方で、とは言え、それが日本の住宅の常識か・・・と納得もしながら、まずはそれら一切を取っ払い綺麗にした状態を想像しながら、風景を眺め、建ち方や風情を構想してゆきました。
このプロジェクトで最も重要であったことは、ギャラリーと、さらにセミナーを開催するスモールオフィスを併設する要望でした。予算計画を睨みながら悩む日々が続き、タイムオーバーでプレゼンテーションの為の作図を始めたその日、クライアントから追加予算の申し入れが入りました。驚きと同時に、嬉しさのあまり次の瞬間に全てつくり直さないといけないと思い、その日のうちに全く新しい平面図が出来上がりました。住宅でありながら街に、あるいは若いアーティストや学生に「開かれた建築」です。それは単に住宅の一部にギャラリーやオフィスを計画することとは全く意味が違いました。私が悩んでいたことは、それを実現するための予算が足りないことでした。若いクライアントがなぜ家を建てようと思ったのか、なぜギャラリーとオフィスを併設しようと思ったのか、それを考えれば考えるほどに、責任の重さとプランのギャップが大きくなっていたことが悩みの原因でした。
傾斜を利用した床下空間を街に開放する手法は、モダニズムが提案したピロティー空間そのものですが、大切なことはそこに広がる空間のクオリティーなのです。人が座ることを誘発する段差や数人座ってちょうどよいニッチ空間が、あくまで身体性、身体スケールから導き出されている必要があります。そして、その空間を流れる風やその先に広がる風景までも、建物を浮かそう、と思うに価する重要なきっかけとなりました。それら全てが建築の建ち方を決める要素であり、言葉による公共性ではない、人が居ようと思えるほんとう場所がそこに出来たと思います。アウターギャラリーに植えた紅葉が美しい木陰をつくり出すころ、そこに集う人々の姿を今から楽しみにしています。
計画としてはとても難易度の高い仕事でしたが、この様なチャンスを頂いたクライアントには心より感謝いたします。