14.03.22
昨年のことになりますが、acaaとしては珍しく東京の真ん中でとても小さな住宅が竣工しました。旗竿状の敷地で、その奧の四角い部分は正味20坪くらいの規模です。
周囲には眺望出来る風景は何もなく、さらに町工場や低層マンションに囲まれている状況ですから、中庭を囲い込んで敷地内に独自で風景を作り上げる計画です。小さい家に無理に大きな空間を確保しようとしても限界がありますし、全力を出し切ったその空間も敷地の規模を逸脱した広がりは持てませんから、むしろ寂しいです。ですので、この住宅ではより小さな居場所を出来るだけ沢山つくり、それらを階段状の居場所で繋いでいくということを考えました。
そこにはルールがあって、一つはソファーの間、一つはダイニングテーブルの間、もう一つは畳の間です。それぞれ人が座った時の目線が異なりますので、そこに居る時にぴったりはまる空間スケールを、その家具や姿勢に応じて変えています。だいたい、3帖、2帖、1.5帖、といった具合で、数字だけ見ると信じられないかもしれませんね。そしてそれらを繋ぐ階段状の空間は吹き抜けで天井が高く、エントランスやキッチンなどが連続して計画されています。小さい居場所を繋ぎ止める全体性の担保です。
そしてもう一つ全体性を担保する場所が中庭です。この中庭はポーチから連続して内側に引き込まれ、竹林の間をかき分けてベンチ伝いに歩いて行くと、お風呂の前庭を経て寝室まで到達します。つまり、中庭も明と暗を繰り返しながら細かく空間が分節されており、それらをベンチで繋ぐことで全体性を認識させ、同時に屋内外をループする動線をつくり出しています。
竣工後、今年は初めての夏を迎えるわけですが、ここにさわやかな風が竹を揺らし、東京のど真ん中とは思えない静けさの中で夕涼みが出来ることを今から楽しみにしています。