Report

Nesting in the Sky 竣工レポート

15.01.24

静岡県三島市の住宅街を見下ろす丘のてっぺんに住宅が完成いたしました。

敷地探しからご一緒させていただいたクライアントと選んだ土地は、住宅街の一番奥、三角形の敷地形状がうねる様に急勾配になってゆく形状です。きっと誰も買わない(買えない)だろうな、と想定しつつ価格もお値打ちでしたので、拝見してすぐに決めて頂きました。眼下に市街地、裏手側には富士山というロケーションで、つまり360度風景があるわけです。そこで、中間階から最上階まで螺旋階段を上るようにしてだんだんに上に昇って行き、最終的には360度に風景が広がる立体構成を計画しました。
その場合、最も大切なことは、日常生活においては囲まれた安心感も重要だということです。つまり風景ばかり見て生活は出来ないということで、生活のシーンに合わせて居場所を選び取ることによって、開放感も変化する仕組みを創りたかったのです。例えば、ガラス張りの建築は、家の中から外も良く見えますが、逆に外から生活が丸見えでとても安心して住まえるものではありません。ですから、風景を全開で眺めたい時間や気分のときはその様な場所で過ごし、雨の日や夜の静かな時間などはもっと落ち着いた、つまり壁に囲まれた居場所を選び取りたくなるものなのです。その選び取れる場所の豊富さが、家の本質ではないかといつも思うのです。

さて、最初にその様な風景と家との関係を考えつつ、同時に難しかったことはやはりコストの兼ね合いです。この場合、上に向かって延びた塔状のフォルムを最初に構想しましたので、いっそのこと地盤面(傾斜地)への接地面積をぎりぎりまで縮小し、土工事、基礎工事のボリュームを最小限にすることが望ましいと思いました。その結果として上階より下階の床面積を縮小していく形状が生まれました。傾斜地を造成することは基本的には一切しませんでした。駐車場だけはやむを得ずコンクリートで盛土して造成しましたが、そこから家へはブリッジでアプローチします。その瞬間も家へ入るということが劇的なことの様に感じられます。

周囲は自然な樹林に囲まれ、季節折々に様々な風情を提供してくれます。素晴らしい土地と素晴らしい施主に出会うことが出来たことは本当に幸せでした。出会いから竣工までとても楽しく仕事をすることが出来ました。

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