15.08.24
初夏のころ、神奈川県藤沢市にて、初老というにはまだお若い60代夫婦のための小さな終の棲家が竣工いたしました。もともと付近は砂丘地帯で、その丘陵地の一部が今回の敷地でした。すでに、敷地付近一帯を除いてすべて住宅街になっていましたので、その風情は残すところ敷地の周囲だけといった雰囲気でした。acaaの傾斜地に建つ住宅写真をご覧になってご依頼いただいたクライアントでしたので、初めて敷地を拝見したときも「岸本さんに依頼するならこんな土地だよね」とおっしゃっていたのがとても印象に残っています。
さて、acaaでは割と多い<終の棲家>のご依頼ですが、今回も夫婦が2人過ごすために必要かつ十分な規模であり、予算内にきちんと収めるためにコンパクトな構成です。敷地面積は37坪、建築面積は12坪、延床面積は22.7坪という規模です。建築的にはコンパクトですが、気持ちよさや空間の豊かさは、住宅の大きさでは決まりません。生活の受け皿となる適正な規模が要求されるのです。今回はお二人での生活ですが、ご子息様のたまの帰宅のための空間も地下に用意しました。今回の立ち方で最も重要だと思ったことは、家の規模をできる限り小さくして、そして敷地の中央に据えることによって、周囲に生まれた空地に植栽をすることでした。数年後には樹木に囲まれた小さな家が完成することが目的です。さらに、東西軸にもうけた2階のリビング空間からは朝日と夕日だけではなく富士山も眺めることが出来ます。これから家で過ごす時間が長くなるため、朝日のさわやかさと夕日の感動を味わって頂きたいという思いが込められています。これからの第二の人生をたのしく、そして豊かに過ごして頂きたいと思います。